SynologyのNASでも、昨年4月からサポートされたSMB3 Multichannel。有効にすれば、MacでもNASとの間の転送速度が向上するようです。実際に転送速度は上がるのか?気になるので試してみます。
以下、ネットの情報を斜め読みして狭く浅く理解したつもりの内容です。間違っていたらごめんなさい。また、MacとSynology のNASの話なので、Windows PCやその他のNASとでは事情が異なるかもしれません。
過去には、イーサネットアダプタでマルチギガビット化
以前、Mac miniとNASの間をマルチギガビット化した際には、2.5Gbps対応のイーサネットアダプタを使用しました。SMB3マルチチャネルが使えることに、この時はまったく気づいていませんでした。
SMB3 Multichannel(SMB3 マルチチャネル)とは?
SMB3は、サーバのデータをクライアントで利用できるようにするネットワークファイル共有プロトコル。そのSMB3プロトコルの機能の1つがMultichannel(マルチチャネル)です。
SynologyのNASでは、ファイルサービス管理ツールの”SMBサービス”4.15.9で正式にサポート。macOSについては、Big Sur 11.3以降デフォルトで使用できます。
マルチチャネルは、複数のネットワーク接続を同時に使用可能にする機能で、サーバーとクライアント(ここではSynologyのNASとMac)間の帯域を拡張し転送速度を向上します。 図Aでは1GbEを同時に2つ使用しているので、MacとNASの間の転送速度は最大2Gbpsになります。
RSS対応ならケーブルの本数を減らせる?
図Aでは、クライアント(Mac)からスイッチまで複数本のケーブルが伸びています。マルチチャネルを有効にするには、複数のネットワークアダプタが必要だからです。
ただし、ネットワークアダプタがRSS (Receive Side Scaling) をサポートしていれば、ネットワークアダプタが1つしかなくても、マルチチャネルを有効にできます。クライアントのイーサネットポートが十分に高速なものなら、図Bのようにクライアントとスイッチを繋ぐLANケーブルは1本で済みそうです。クライアントとNASの間の転送速度は、図Bにおいても最大2Gbpsであることが期待できます。
ところが、mac OSはRSSをサポートしていないらしく、単一のネットワークアダプタではマルチチャネルを有効にできません。残念ながら、図BにおけるMacとNASの間の転送速度は最大1Gbpsです。
参考:
SMB Multichannel available for testing!
SMB Multichannel setup – will this work?
SMB3 マルチチャンネルとは何ですか、Link Aggregation との違いは何ですか?
SMB マルチチャネルの動作設定をする
リンクアグリゲーション(Link Aggregation)とは別物
転送速度を向上させる方法にリンクアグリゲーションがありますが、SM3 マルチチャネルとは別物です。リンクアグリゲーションには、対応するスイッチが必要です。
参考:
SMB3 マルチチャンネルとは何ですか、Link Aggregation との違いは何ですか?
Mac mini(M1, 2020)とNASをSMB3 マルチチャネルで接続
実際にMac miniとNASでマルチチャネルを試してみます。使用するNASはDS1621+です。 Mac miniにはイーサネットポートが1つしかありません。RSSも未サポートのため、イーサネットアダプタを3つ追加します。
Mac miniにイーサネットアダプタを3つ追加。そこからLANケーブルを伸ばします。
NASにも4本ケーブルを挿します。
スイッチと必要な本数のケーブルで繋ぎます。
次にDSMでSMBマルチチャネルを有効にします。NAS側の設定はこれだけ。
MacとNASをSMB3 マルチチャネルで接続すると転送速度は向上する?
さっそく計測結果を見てみましょう。
計測にはBlackmagic Disk Speed Testを使用しています。
Stress | 1GbE x 1(MB/s) | 1GbE x 2(MB/s) | 1GbE x 3(MB/s) | 1GbE x 4(MB/s) | |
1GB | WRITE | 95.3 | 180.1 | 259.2 | 342.3 |
READ | 110 | 210.6 | 303.8 | 375.8 | |
5GB | WRITE | 97.3 | 194.1 | 267.9 | 344.1 |
READ | 110 | 210.1 | 305.4 | 377.2 |
1本より2本、2本より3本と、本数が増えるほど転送速度が向上しています。期待通りです。
Synologyのコンシューマー向けNASは、未だに1GbEが標準搭載。簡単に転送速度を向上できる本機能は、非常にありがたい存在ですね。
イーサネットが2ポートあって、マルチチャネルをサポートする機種をお使いなら、今すぐにでもお試しを。